続・となりのツキノワグマ(2) 里にもクマがいる
7月14日、北秋田市の大館能代空港近くにある伊勢堂岱遺跡で、爆竹を鳴らしてクマを追い払おうとしていた市の職員が、クマ(たぶん1歳半)に襲われて負傷するという事件がありました。
伊勢堂岱遺跡は、空港関連の道路工事のときに発見された縄文時代の遺跡で、大きなストーンサークル(環状列石)がいくつもある、祭事場ではないかと言われている大きな遺跡で、大湯のストーンサークルや青森の三内丸山遺跡などとともに、世界遺産登録を目指している遺跡です。
しかし昨年は遺跡の遊歩道にクマが出没して、一般公開が中止となりました。今年は大きな音を出す「爆音器」を導入して公開を始めたところ、6月に遺跡内でクマが目撃され、それ以降は一般公開を中止し、すでに予定が入っていた団体については、係員が同行して案内していました。
7月14日は、東北各県の自治体職員の研修会が伊勢堂岱縄文館(資料館)て開かれていて、そのあとの現地視察の前に、念のためにと爆竹を使って、市の職員など4人が追い払い作業をしていたところ、藪からクマが突然現れて、少し離れた所にいた男性職員を襲いました。気がついた他の職員が大きな声を出して威嚇すると、クマは逃げたとのことです。襲われた職員は公民館担当の部署で、私の管理者にあたり、もちろん知っている人です。
この事件でこの日の現地見学は中止され、その後も一般公開の見込みはなく、襲われた本人にとっても、市にとっても大きな痛手となりました。
秋田県の高速道路や国道、県道で、クマの交通事故がたくさん起きています。クマが飛び出して車に当たり、車はバンパーなどが破損、クマは逃げて行くというのが普通のパターンです。でも、7月31日には秋田市近郊の秋田自動車道では、クマが死亡しています。
事故の頻度からすると、相当数のクマが、山奥ではなく人里近くに来ていることがわかります。今年は特に多いようです。これは、一昨年の山の木の実が大豊作だったため、その冬に出産するメスグマが多く、ちょうど1歳半になって親離れしたばかりの子グマ(青少年グマ)が歩き回っているという指摘もあります。
伊勢堂岱のあたりは、山というより丘、台地です。山の食べ物だけでなく、畑の作物や家畜の飼料、時には比内地鶏なども餌にしてしまう、困ったクマとして世代を重ねているかもしれません。そして、「里山のクマ」は、奥山のクマとは性格が違い、人間にとって危険なのは、「里山のクマ」のほうだという人もいます。
北秋田市では今年6月に、北海道大学の大学院と、くまくま園(クマ牧場)でのクマの研究について協定を結びました。今後、クマの被害を防句手だてなどについても、知見を得られればありがたいと思います。
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